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学習法

単語帳・単語カードは紙とアプリどちらがいいか——差は小さい。分かれ目は枚数と使い方

単語カードを紙で作るか、アプリにするか。検索すると、「アプリの方が効率的」という記事も「紙の方が覚えられる」という記事も見つかります。

結論から書くと、紙とアプリを直接比べた研究では、覚えられる量の差は小さく、使い方をそろえると差が消えることもありました。分かれ目になるのは道具そのものより、枚数と、答えを隠して思い出しているかどうかです。

この記事では、比べた研究を紹介したうえで、紙が向く場面とアプリが向く場面を整理します。私たちは暗記アプリを作っている側なので、紙の方が向く場面から先に書きます。

結論:覚えられる量の差は小さい。分かれ目は枚数と使い方

紙とアプリの違いは、次の3点にまとめられます。

紙とアプリを比べた研究

同じ内容を紙とアプリで覚えさせて比べると、覚えた量の差は小さいという結果が出ています。代表的な研究が2本あります。

1本目は、2019年に発表された Sage らの研究です。大学生が、紙・パソコン・タブレットのいずれかの単語カードで語彙を覚えました。カードは自分で作ったものとあらかじめ用意されたものの2種類です。

比べたこと結果
覚えた量紙とタブレットは同じくらい。パソコンは劣った
満足度紙がいちばん高かった
頭の負担(認知負荷)3つとも同じくらい
自作と既製あらかじめ用意されたカードの方が、多く覚えていた

2本目は、2017年の Dizon と Tang の研究です。紙の単語カードのグループとデジタルの単語カードのグループを比べ、紙のグループにも覚え方のコツ(語彙の学習方略)を使わせました。結果は、どちらのグループも伸びたものの、伸びの差は有意ではありませんでした。

著者らは、それ以前の「デジタルの方が効果的」という研究では、紙のグループに覚え方のコツが与えられていなかった点を指摘しています。道具の差に見えていたものの一部は、使い方の差だった可能性があります。

⚠️ デジタルの方が上回った研究もあります。日本の大学生139人を対象にした Ashcroft らの研究(2018年)は、タイトルのとおり「英語の習熟度が低い層では、デジタルの単語カードが紙を上回った」と報告しています。研究によって結果は分かれていて、どちらかが大きく勝つ、という状態ではありません。

🔑 もうひとつ、アプリを作っている側として正直に書いておくべき結果があります。Sage らの研究では、自分で作ったカードより、あらかじめ用意されたカードの方が多く覚えていました。「自分で作ると覚えやすい」という通説とは逆の結果です。1本の研究なので断定はできませんが、自作すれば覚えられる、とは限りません。作るならどう作るかは暗記カードの作り方にまとめています。

紙でも間隔反復はできる

アプリの利点として「忘却曲線にもとづいて、自動で復習させてくれる」がよく挙がります。これは半分だけ正しい説明です。

日にちを空けて復習する仕組み(間隔反復)は、紙でもできます。代表的なのが、カードを箱や封筒に分けて回すライトナーシステムです。正解したカードは次の箱へ進め、間違えたカードは最初の箱へ戻します。進んだ箱ほど開ける間隔を空けていくので、覚えたカードは出番が減り、苦手なカードほど何度も出てきます。

では、アプリとの本当の差はどこにあるのか。「今日はどのカードを出すか」を1枚ずつ管理する手間です。

紙のライトナーシステムは、「箱1は毎日、箱2は数日おき」のように箱単位で回します。枚数が少ないうちはこれで十分です。ただ、枚数が増え、科目も増えてくると、今日どの箱を開け、どれだけやるかを毎回自分で決めることになります。ライトナーシステムの記事では、この分かれ目を200枚あたりと書きました。

アプリがしているのは、この帳簿付けを代わりにやることです。仕組みそのものは紙と同じです。

「書くから覚える」は、答えを隠して書くときだけ

紙の利点として「手で書くから記憶に残る」もよく挙げられます。ここにも条件があります。

書いて覚えることについての記事で詳しく書きましたが、効くのは答えを隠して、思い出しながら書くときです。答えを見ながら書き写すだけでは、読み返しと同じ構造になるので、手応えのわりに効きにくいと考えられます。

つまり、紙の単語カードの強みは「書くこと」そのものではありません。表を見て、裏を隠したまま思い出すという使い方にあります。これはアプリでも同じことをしています。

紙が向く場面、アプリが向く場面

ここまでをまとめると、次のように使い分けるのが現実的です。

紙が向くアプリが向く
枚数が少ない(目安として200枚まで)枚数が多い、科目が複数ある
短い期間だけ使う(1回の試験前など)長く続ける(数か月〜年単位)
図・数式・漢字の書き順など、手で書いて答えたい通勤や休み時間など、すきま時間に回したい
画面を見る時間を増やしたくない複数の端末で同じカードを使いたい
進み具合を箱の厚みで見たい何日後に何枚来るかを先に知りたい

🔑 両方を使う方法もあります。たとえば「覚え始めは紙で、枚数が増えたらアプリへ移す」という順番は、ライトナーシステムの記事で勧めている入り方とも一致します。

実装の内側:紙の封筒5つをアプリにしたとき、何を自動にしたか

私たちの暗記アプリ RepeCa の復習の仕組みは、ライトナーシステムの5つの箱を、日付で管理する形にしたものです。コード上は、レベルが1から5まであり、次に出てくるまでの間隔は 1日・3日・7日・14日・30日 です。正解すると1つ上のレベルへ、間違えるとレベル1へ戻ります。これは紙の封筒で「間違えたら最初の箱へ」とするのと同じ規則です。

違うのは1点だけです。紙では「箱2は数日おきに開ける」のように箱ごとに予定を決めますが、RepeCa ではカード1枚ずつに「次に出る日」を記録しています。同じレベル2のカードでも、覚えた日が違えば出てくる日も違います。紙でやると帳簿がいちばん重くなる部分を、ここで引き受けています。

反対に、RepeCa には書いて答える形式がありません。表を見て思い出し、裏をめくって自分で採点する形です(ほかに○×・選択肢の形式もありますが、いずれも書いて答える形ではありません)。漢字の書き順や数式のように、手で書けるかどうかを確かめたいものは、紙の方が向いています。

まとめ


この記事について

このサイトは、暗記アプリ RepeCa の開発元が運営しています。最後の節の「実装の内側」は、ライトナーシステムをアプリにしたときの規則をそのまま書いたものです。私たちはアプリを作っている側で、紙の単語カードとは競合する立場にあります。その前提で読んでください。

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