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学習法 (更新: 2026年8月26日)

1日20枚入れると、復習は何枚になるのか——間隔反復の負荷を先に計算する

「1日に何枚のカードを入れるべきか」には、一般解がありません。使える時間も、覚えたい量も、締め切りも人によって違うからです。

ただし、計算はできます。 そして計算してみると、多くの人が想定していない事実が出てきます。間隔反復の負荷は、途中から「今日入れた枚数」ではなく「これまでに入れた総枚数」で決まるようになる、ということです。

この記事では、カード1枚が生む復習の回数から始めて、3か月後・1年後に1日何枚を解くことになるのかを実際に出します。数字は実装値をそのまま使うので、同じ式で自分の枚数に置き換えられます。

まず、カード1枚が生む復習の回数

間隔反復では、正解するたびに次に出るまでの間隔が伸びます。ここでは5段階・1日 → 3日 → 1週間 → 2週間 → 1か月という間隔で説明します(ライトナー方式の標準的な置き方で、私たちの実装値でもあります)。

順調に正解し続けたカード1枚は、こう動きます。

何が起きるか次はいつ
0日目新規として導入(1回目)3日後
3日目復習1回目7日後
10日目復習2回目14日後
24日目復習3回目 → 最終段階に到達30日後
54日目復習4回目30日後
84日目、114日目…以後、30日ごとに永久に30日後

まずよくある誤解をひとつ潰しておきます。「1日 → 3日 → …」の1日は、間違えたときの間隔です。順調なカードが翌日に出ることはありません。最初の復習は3日後です。

そして本題はここから。最終段階に届くまでの復習は3回で終わりますが、そこから先は30日ごとに永久に戻ってきます。この2つは性質がまったく違います。

負荷は2種類に分かれる

1日に N 枚を入れ続けたとき、その日の復習量は次の2つの合計になります。

① 育成中の負荷 = 3 × N

最終段階に届くまでに復習が3回。毎日 N 枚を入れているなら、その3回ぶんが毎日 N 枚ずつ発生します。1日20枚なら 60枚/日

これは増えません。 何年続けても 3 × N のままです。

② 維持の負荷 = 最終段階のカード枚数 ÷ 30

最終段階のカードは30日ごとに1回戻ってきます。1000枚あれば毎日およそ33枚。3000枚あれば毎日100枚。

こちらは増え続けます。 カードを入れるのをやめない限り、最終段階の在庫は積み上がる一方だからです。

1日の復習量 ≒ 3 × 新規枚数 + 最終段階の枚数 ÷ 30

1日20枚を1年続けるとどうなるか

上の式に入れるだけです。全問正解し続けた場合——つまり最も軽く見積もった場合——の概算がこちら。

経過総枚数最終段階育成中維持1日の復習
1か月600枚140枚605約65枚
3か月1,800枚1,340枚6045約105枚
6か月3,600枚3,140枚60105約165枚
1年7,300枚6,840枚60228約290枚

1日20枚は、感覚としてはかなり控えめな設定です。それでも1年後には毎日290枚を解くことになります。1枚10秒でも50分弱。

しかもこれは下限です。実際には間違えます。間違えたカードは最初の段階に戻り、また3回の復習を経て最終段階まで登り直します。誤答が1〜2割あれば、上の数字は1.5倍前後まで膨らみます。

内訳を見ると、増えているのは維持のほうだけだと分かります。育成中はずっと60枚で一定です。1年目の負荷の8割は、「今日勉強したいこと」ではなく「過去に入れたカードの維持費」です。

なぜ頭打ちにならないのか

理由は単純で、最長の間隔が30日で止まっているからです。

最終段階に達したカードは、それ以上間隔が伸びません。何度正解しても30日後に戻ってくる。だから枚数が増えれば、維持費は比例して増え続けます。「総枚数 ÷ 30」より軽くなることは、構造上ありえません

ここは正直に書きます。この点では Anki 系のほうが構造的に有利です。

Anki は間隔に上限らしい上限を置いていません(既定の最大間隔は 36,500日=約100年)。正解を重ねたカードの間隔は数か月、数年へと伸びていくので、古いカードほど負担が軽くなります。維持費が総枚数に比例せず、頭打ちに向かう。Anki のマニュアル自身が、最大間隔の説明でこう書いています——この最大間隔を短く設定するほど、作業量は増える

私たちが30日で止めているのは、試験型の学習を想定しているからです。3か月後に試験がある人にとって、カードが1年後まで出てこないのは困ります。「本番までに必ず何度か戻ってくる」ことのほうが、総作業量より優先だと判断しました。

トレードオフとして正直に言うと、こうなります。

後者が目的なら、Anki 系を選ぶのが合理的です。ここを曖昧にしても読者の役には立ちません。

では、何枚入れればいいのか

式が分かれば、1日に使える時間から逆算できます

この15分をまとめて取れない場合でも、計算は変わりません(隙間時間の勉強は意味がないのか)。変わるのは1回の長さで、1日の合計ではないからです。

1枚あたり10秒として、15分=約90枚が1日の上限だとしましょう。この90枚を使い切るまでの猶予は、投入量でこう変わります。

1日の新規育成中で使う枠維持に回せる枠上限に達するまで
20枚60枚30枚(=最終段階900枚ぶん)約2か月
10枚30枚60枚(=最終段階1,800枚ぶん)約7か月

新規を半分にすると、続けられる期間は約3倍になります。 育成中の枠(3 × N)が固定費として先に引かれるので、投入量を絞るほど維持に回せる枠が広くなるからです。

ここから実践的な指針が出ます。

  1. 1日に確保できる時間を先に決める。枚数ではなく時間から入る
  2. その時間の3分の1を、育成中の枠として見積もる。使える枠が90枚なら、新規は10枚前後が上限
  3. 残りが維持費に食われていく前提で計画する。半年先の負荷まで一度計算しておく
  4. ゴールの日が決まっているなら、逆算する。試験まで3か月なら維持費はまだ小さいので、もう少し攻めてよい

柱の記事で「まず1日10〜20枚から」と書いたのはこの計算の結果です。物足りなく感じても最初の2週間は増やさないでください、と書いた理由も同じで、負債は2か月遅れて到着します

なお、休む曜日を設定している場合は、同じ復習が少ない日数に集まるぶん1日あたりはさらに増えます(週1日休むなら約1.17倍)。

Q: 英単語なら1日何個覚えるのがいいのか

計算の構造は同じです。英単語は1枚が軽い(表裏が短く、1枚数秒で終わる)ので時間あたりの枚数は増やせますが、育成中の枠が3倍で先に引かれる構造は変わりません。TOEIC や英検のように試験日が決まっている場合は、上の指針4のとおり残り日数から逆算します——試験まで遠いほど維持費が積み上がるので、「早く始めて1日の個数を絞る」ほうが「直前に大量投入」より総負荷が小さくなります。

増えすぎたときにできること

計算どおり負荷が上限を超えたとき、打てる手は3つしかありません。

① 新規の投入を止める(または減らす)

最も効きます。3 × N の固定費が消え、維持費だけになります。すでに溜まってしまった状態からの戻し方は復習が溜まってしまったときの立て直し方に手順を書きました。

② カードを捨てる

維持費は総枚数に比例するので、枚数を減らすことが唯一の根本策です。「もう思い出せなくても困らない」カードを消すのは後退ではありません。最初から入れるべきでなかったカードの整理はカードの作り方の原則に書いたとおりで、入れないことも設計のうちです。

③ 道具を変える

長期の蔵を作るのが目的で、総枚数が増え続けるなら、間隔が伸び続ける設計に移るのが筋です。前述のとおり、これは製品の優劣ではなく用途の違いです。

やってはいけないのは進捗のリセットです。維持費は一時的に消えますが、全カードが育成中に戻るので、数週間後にもっと重い状態で返ってきます。

まとめ


この記事について

このサイトは、暗記アプリ RepeCa の開発元が運営しています。この記事の数字は、私たちの実装値(5段階・間隔は1日/3日/7日/14日/30日・最長30日で上限)をそのまま使って計算したものです。表の値は本文中の式による概算で、同じ式に自分の枚数を入れれば再計算できます(離散シミュレーションでも同じオーダーになることを確認しています)。

自社製品の設計が長期の蓄積に向かないことを数字で書いています。 隠すほうが不誠実だと考えました。用途が「何年も維持する知識の蔵」なら、間隔が伸び続ける設計を選んでください。私たちが30日で止めているのは試験型の学習を優先した結果であって、あらゆる用途で正しい設計ではありません。

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