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学習法

Anki の復習間隔は自分で設定した方がいいのか——固定にした側の理由

暗記アプリの設定画面を開くと、復習間隔をいじれるものがあります。「1日後・3日後・7日後……」の数字が並んでいて、自由に書き換えられる。設定できるほうが良さそうに見えます。

ただ、設定できることと、設定して良くなることは別です。復習間隔は、直感で調整すると外れやすい種類の数字でもあります。

この記事では、Anki のどの設定が間隔を決めているのかを公式マニュアルで確認したうえで、同じ仕組みを実装しながら「ユーザーに設定させない」を選んだ側から、その判断の中身を書きます。結論と例外を先に置きます。

結論——ほとんどの人は、間隔を触らなくていい

触るべきなのは復習間隔ではなく、1日に入れる新規カードの枚数です。

理由は3つあります。

  1. 間隔には万能の正解が無い。 最適値は試験日までの期間で変わるので、固定の数列はどのみち近似です
  2. 近似のズレより、負荷のほうが先に効く。 間隔を1日ずらしても体感は変わりませんが、新規を1日50枚入れると数週間後に毎日100枚以上の復習が来ます
  3. 間隔を変えると、既に積み上げた予定が全部ずれる。 変更は過去のカードにも遡って効くので、影響範囲が読みにくい

3つ目は実装した側の話なので、後半で詳しく書きます。

そもそも最適な間隔は、何で決まるのか

ゴールまでの期間で決まります。 Cepeda らが2008年に発表した研究(Psychological Science・1,350人以上が参加)は、最適な復習間隔がテストまでの残り期間に比例して伸びることを示しました。比率は期間が長くなるほど小さくなり、1週間後のテストなら期間の20〜40%程度、1年後なら5〜10%程度です。

研究が示しているのは比率であって、日数そのものではありません。つまり唯一の正解は存在しません1週間後の試験に「1か月後の復習」を設定しても意味がありませんし、逆もまた同じです。

研究の中身と、試験日から逆算して設計する手順は間隔反復(SRS)とは——忘却曲線から逆算する復習の設計にまとめました。ここでは「間隔の設定には、正解を教えてくれる基準が存在しない」という点だけ押さえておいてください。設定できるということは、根拠のない数字を自分で決めることでもあります。

Anki では、どの設定が間隔を決めているのか

Anki はデッキオプションで細かく設定できます。公式マニュアルの Deck Options から、間隔に効くものを抜き出すと次のとおりです(2026-08-24 に確認)。

設定名何を決めるか
Learning Steps覚えたてのカードを何分後・何日後に出し直すか。「Again」で最初のステップへ戻る
Graduating Interval学習ステップを終えたカードが、次に出るまでの日数
Easy Interval学習中のカードに「Easy」を押したときの日数
Relearning Steps一度忘れた(lapse した)カードのやり直しステップ
Maximum Interval復習間隔の上限。既定は100年
New Cards/Day1日に導入する新規カードの枚数

さらに FSRS を使うと、間隔をアルゴリズムに任せられます。マニュアルには「デッキオプション最下部の FSRS セクションで有効にする」「グローバルにしか有効化できない(一部のプリセットだけ有効にはできない)」と書かれています。

個別のカードだけ予定をずらしたいときは、Set Due Date で任意の日付に移せます。

この設計自体は合理的です。 Anki は長く使う人・自分で最適化したい人に向けて作られていて、そこに不足はありません。⚠️ ただし、上の6項目のうち、初心者が触って効果を実感できるのは実質 New Cards/Day だけだと考えています。理由は次に書きます。

なぜ私たちは 1/3/7/14/30 に固定したのか

私たちのアプリでは、復習間隔をユーザーが変更できません。 5段階のレベルを持ち、間隔は 1日 → 3日 → 1週間 → 2週間 → 1か月 に固定しています。

11日23日37日414日530日正解 →正解 →正解 →正解 →間違えたら、どのレベルからでもレベル1へ戻す

なぜ倍々(1・2・4・8・16)にしなかったのか。判断は2つです。

そのうえで、数字そのものは画面に出していません。「レベル」という言い方はしますが、1日・3日・7日……という具体的な日数は表示しません。近似でしかない数字を表に出すと、根拠のない微調整を誘発するからです。

間隔の置き方をもっと詳しく——間違えたときにどこまで戻すか、1日の境界をどこに置くか——はライトナーシステム(箱式暗記法)の正しい回し方に7項目でまとめました。

設定できるようにすると、何が起きるのか

実装の側から見ると、間隔を可変にした瞬間に3つの問題が出てきます。作る前は「配列を設定値にするだけ」に見えていました。

過去のカードをどうするか

間隔を変えた瞬間、既にレベル3で「7日後」の予定が入っているカードが宙に浮きます。 新しい設定では10日後かもしれない。

選択肢は2つで、どちらにも副作用があります。

選択起きること
既存の予定をそのまま残す設定を変えたのに何も変わらないように見える。数週間かけて徐々に切り替わる
遡って全部計算し直す数百枚の予定日が一斉に動く。「明日やるはずだったカードが来月になった」が起きる

私たちは、実装するなら後者(遡って再計算する)と決めています。休息曜日の設定(後述)で同じ仕組みを既に持っているためです。⚠️ ただし「設定を1回押すと予定表が全面的に書き換わる」という体験自体は、どちらを選んでも避けられません。

数字を表に出すことになる

間隔を編集させるなら、画面に「1日・3日・7日・14日・30日」と表示するしかありません。前述のとおり、私たちはこれを避けています。

数字が見えると、人は調整したくなります。ところが調整した結果が良かったのか悪かったのかは、数か月経たないと分かりません。判断材料が返ってこない設定は、触るほど不安になるつまみになります。

自動最適化と食い合う

間隔をカードごとに自動で最適化する仕組み(Anki の FSRS がまさにこれです)を後から入れると、手で設定した数字は上書きされるか、無視されるかのどちらかになります。

手動編集の作り込みは、自動化を入れた時点で価値の大半を失う——ここが、私たちが優先度を下げている最大の理由です。

それでも間隔を変えたくなるのは、どんなときか

2つあります。 実際に自分たちで使っていて、この2つ以外では変えたいと思ったことがありません。

  1. 直前期に詰めたい。 試験まで2週間なのに「30日後」は届きません
  2. 長期の語学などで、もっと寝かせたい。 毎日出てくると負荷が高い

私たちが設計だけ済ませているのは、生の数字を編集させるのではなく、フォルダごとに名前で選ぶ3択です。

プリセット想定
標準既定。1/3/7/14/30
じっくり長期の語学など。間隔を広く取る
直前期試験まで数週間。当日中の再出題を含む

⚠️ 画面には名前と一言だけを出し、数字は出さない設計にしています。「科目ごとにペースを変えたい」という需要の大半はこれで満たせて、根拠のない微調整は誘発しない——というのが狙いです。

この機能はまだ出していません。 理由は正直に書くと、実際に「間隔を変えたい」という声や挙動をまだ観測していないからです。設計を先に済ませておいて、需要が出たら作る、という状態で止めてあります。

間隔より先に触るべきものは何か

1日に入れる新規カードの枚数です。 ここだけは、変えると翌週から体感が変わります。

仕組みの性質上、今日入れたカードは明日以降の復習として必ず戻ってきます。1日20枚でも、1年後には毎日約290枚になる計算です(1日20枚入れると、復習は何枚になるのかで実際に計算しました)。

私たちのアプリでは既定を20枚にしていて、フォルダごとに専用の枠も設定できます。Anki なら New Cards/Day が同じ役割です。

もう1つ、間隔の設定より効くものがあります。休む日をあらかじめ決めておくことです。私たちは休息曜日を設定でき、「3日後」をカレンダーではなく学習日で3日後として数えます。日曜を休みにしていれば、日曜は飛ばして数えられる、という意味です。復習が積み上がる不安の一部は、間隔ではなく「休めない設計」から来ています。

すでに溜まってしまった場合の戻し方は復習が溜まってしまったときの立て直し方に、学習履歴そのものを白紙に戻す判断はAnki の学習履歴をリセットしていいのかに書きました。

まとめ


この記事について

このサイトは、暗記アプリ RepeCa の開発元が運営しています。後半の「設定できるようにすると何が起きるか」は、実際に間隔可変化を検討して、採らないと決めたときの論点をそのまま書いたものです(5段階・1/3/7/14/30日固定・数字は非表示・休息曜日の学習日換算・新規導入枠の既定20枚・プリセット3択は設計のみで未実装)。作り手の立場で書いているので、その前提で読んでください。

「設定できないほうが良い」と主張しているわけではありません。 Anki のように細かく設定できることには明確な価値があり、自分で最適化したい人にはそちらが向いています。私たちが書けるのは、同じ仕組みを作りながら別の判断をした理由だけです。

事実関係については、以下にあたって書いています。

誤りを見つけた場合は、お問い合わせからご連絡いただけると助かります。

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